それは、バンドサウンドもあれば、弾き語りもあるという、ステージ上の編成といった表層的な部分だけではない。同じ時間と場所音楽を共有する3000人のお客さんと繋がる一体感を味わいながらも、時に、唐突に、ひとりの人間として、自分自身に向き合わされる瞬間があったのだ。
代々木第2体育館で開催された「オアシス 《YOYOGI DE 360°ステージ囲みまくって熱唱しまくっちゃナイト》」の2日目。同会場でのワンマンライブ2dsysは4年前に続き、2回目。今回は約2年3ヶ月ぶりのニューアルバム『オアシス』リリースの直後というタイミングであったが、アルバム中心の楽曲ではなく、この夏に参戦したフェスの流れを組んだセットリストが用意された。観客に360°囲まれた、会場の真ん中に設置された舞台の上には、「OASIS 360」という文字をかたどったオブジェが置かれており、本人曰く「町内会の秋祭りみたい」に飾られた電飾のおかげで、どこか野外ライブのような趣を感じさせるステージとなっていた。
開演の予定時間より10分遅れで、おおはた雄一(G)、東京スカパラダイスオーケストラの沖裕市(Key)、鹿島達也(B)、SOIL&"PIMP"SESSIONのみどりん(Dr)、SLY MONGOOSEのKUNI(Tp)、ヤマカミヒトミ(Sax)ら6人のバンドメンバーが舞台に上がった。彼らが新作のタイトル曲である「オアシス」のイントロを奏で始めると、永積 崇が両手を広げて、スキップしながら登場。「オアシスがここにあったよ〜」と叫ぶと、1曲目から<まわれ、まわれ>の大合唱が巻き起こった。続けて、アルバム収録のレゲエナンバー「Crazy Love」を歌ったあとで、「どうも、タカシです。よくお越し下さいました。こんな天気のいい日に最高ですね」と呼びかけ、すぐさま「大安」を歌い始める。「賑やかでいいね、今日は」と笑顔で語りながら歌った「レター」は、歌詞を<代々木第2体育館を目指す>と変えて、伸びやかに歌い上げた。観客はオープニングから「あいまいにあまい愛のまにまに」まで総立ちで、それぞれが自由に歌い、踊り、くるくると回る、文字通り「賑やか」でハッピーなバイブレーションにあふれた空間を作っていた。
バンドメンバーが、ステージの後方に設けられたサロンスペースに移動すると、弾き語りコーナーに突入。インプレッションズやロッド・スチュワートのカバーで知られるゴスペルソング「PEOPLE GET READY」をエレキギターで弾き語り、1つの大きな塊となった観客をひとりひとりに解いていく。おおはた雄一とふたりで向き合って歌った「きみはぼくのともだち」を含め、この2曲を聴くと、彼が人生のなかで度々訪れる人との別れに対して、ネガティヴな感情だけを抱いているわけではないことが分かる。そこには、ひとりぼっちになるは嫌だけれども、誰かを想って寂しくなるという感情の積み重ねが、自分の心を豊かにしてくれるんだという実感が表れているような気がした。 やがて、マラカスやギロ、シェイカーやブラシなどを手にしたバンドメンバーが永積の周りに集まり、これまた、360°囲んだ状態で、他人を通して自分自身を知る「マドベーゼ」を歌い、原田郁子が賛美歌に歌詞をつけたohanaの「ヒライテル」では、フルートとミュートトランペットが伴奏をつとめた。そして、続く、生命力が爆発する「SPARK」の演奏中に、ドーンという強い縦揺れを感じた……。