オアシス《YOYOGI DE 360°ステージ囲みまくって熱唱しまくっちゃナイト》

突然の地震に会場はざわめきをみせたが

永積はそのまま演奏を続け、再びバンドセットに戻って歌われた「光と影」の歌い出しで、会場内の空気を一気に引き戻した。<♪だれでもない/どこにもないぜ/僕だけの光と影/闇の向こうの光を見に行こう/光と影>というフレーズの揺るぎのない力強さは、この日、同じ会場に集まった観客の全員の心に残っているだろう。  続いて、「音タイム」のイントロのフレーズが流れた瞬間に観客は大きな声をあげて、会場中はまた総立ちとなった。暗闇から一気に太陽が昇ったようなムードのなか、観客のクラップがグルーブを引っ張る「・・・がしがしの女」から、<わっしゃっしゃ>という笑い声のコール&レスポンスが巻き起こった「明日天気になれ」と、会場の熱気は一気にヒートアップ。そして、夏フェスでも必ず歌われた「オハナレゲエ」での永積の歌声のヴォリュームは、これまでにないほど大きな存在感を携えて響いた。みどりんのドラムが太く重いということも要因の1つではあるが、それ以上に、いま、この曲を歌いたいんだという強い意志が込められていたように思う。<♪君と僕 これからどこへ行くのかな>〜<知りたいこと 知らなくていいこと 歌いながら 耳を澄まそう>というフレーズを絶対に届けたいんだという情熱を感じずにはいられない歌声だった。


ちょっとしゃべれないね・・・・・。胸からもうひとり、人が出てきそうなの。こんにちわーって」というMCで、緊張からの緩和を促したあと、ニューアルバムの最後を締めくくる「ちきしょー」を全力で歌い上げ、本編は終了した。この曲には、彼の現在の心境、歌に対する想いの全てが詰まっている。歌詞に書いてある通りなので重複してしまうが、それは、胸が締め付けられる思いに、揺れるがままに歌い続ける覚悟であろう。もっと言えば、うつろいゆくもの、終わっていくもの、死んでいくもの、消え去っていくものへの感傷。「どうしようもないもの」に対して流される涙や悲しみ、終わりの予感が呼び起こす刹那の今への愛おしさを歌うという決意表明にも聴こえた。


アンコールでは、沖とふたりで登場し、「沖さんとふたりでやるのが夢でした!」という紹介のあとで、ふたりで「愛にメロディ」を演奏した。ここで、震災から半年、アメリカ同時多発テロから10年目であることに触れ、「6ケ月前はライブができるかどうかも考えられなかった。たまたま大きな節目の日にライブができることをありがたく思ってます」と語ったあとで、希望の光に満ち満ちた「あいのわ」の歌詞を<忘れないでいて 耳を澄ませば 大好きなあの歌 聴こえてくるよ>ではなく、<忘れないでいよう>と、直接ひとりひとりに呼びかけるように歌った。さらにダブルアンコールでの弾き語りによる「あいのこども」では、<かなしい ひかりの うた>で終わるところを、<かなしい ぼくらの うた>と2回続けて歌った。ここでもやはり、彼はひとりひとりが<悲しみを悲しみのまま受け入れる>大切さを歌っていたように思う。喜びや楽しさ、愛はみんなで共有し、悲しみや憂鬱や切なさは私的に向き合うものであることを気づかされる思いがした。

最後に「こんなに全てを使い切ってやったのは初めてかもしれません。エネルギーがなくなりそうだけど、まだ沸き上がるものがあるね。またみなさんで集まりましょう」と再会の約束をして、約2時間半におよんだライブの幕を閉じた。客電がつくと、さっきまで目の前にあった多幸感でいっぱいの「オアシス」はもうなくなっていた。だが、ひとり家路につき、ライブから1週間が経った今でも、その余韻は心の中に焼き付いていて、ずっと消えはしない。